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 今月は、ちょっと趣向を変えて「名義預金劇場」をお届けします。

 それでは、はじまり、はじまり・・・・

 登 場 人 物

 おじいちゃん おばあちゃん 金融機関の職員 税務署の調査官

 秋も深まるある日の午後、お茶の間でおじいちゃんがおばあちゃんに話しかけます。

 「私もそれなりの年齢だ。もしもの時のことも考えないといけないな。この前、セミナーでもらった『相続税の申告要否 簡易判定シート』で判定してみたら、相続税の申告が必要になりそうだ。何かいい方法はないものかな。

 おばあちゃんが応えます。

 「それだったら、おじいちゃんのお金を毎年100万円ずつ、3人の孫たちに贈与しておきましょうよ。1年に110万円までなら贈与税もかからないし、孫は相続人じゃないから、3年以内に贈与したものも相続財産に加えなくてもいいわよ。」

(おばあちゃんはよく勉強していますね。確かに相続人への贈与は3年分遡って相続財産に加える必要がありますが、孫は相続人ではないので、その必要はありません。)

 するとおじいちゃんは、

 「それはいい考えだな。では早速、金融機関に行って孫名義の定期預金を作ってこよう。だけど、このお金をあてにするようになってもらっては困るので、このことは孫たちには黙っておこう。」

 こうして、おじいちゃんは、顔なじみの金融機関で自分の預金を300万円取り崩し、孫3人の名義で100万円の定期預金を3口作りました。

 金融機関の職員さんは定期預金を獲得できてニコニコ顔でこう言いました。

 「おじいちゃん、いいことをしましたね。これで300万円は3人のお孫さんのものです。来年もまたよろしくお願いしますね。」

 (と言って、ラップフィルムとポケットティッシュをくれました。)

 おじいちゃんは、これを3年間繰り返し、合計900万円を孫名義の定期預金にしたのでした。

 そしてその時がやってきました。おじいちゃんが亡くなったのです。

 それから半年が過ぎました。やっと気持ちの整理もついた頃のことです。税務署から、「相続税の申告について」という手紙がおばあちゃんのもとに届きました。驚いたおばあちゃんは、おじいちゃんが残していた「相続税の申告要否 簡易判定シート」で判定してみました。すると相続税の申告が必要だということが分かりました。

 おばあちゃんは、息子と娘に連絡して、一緒に相続税の申告と納付を済ませました。もちろん、孫名義の定期預金900万円は相続財産に含めていません。なぜなら、それはおじいちゃんがかわいい孫のために贈与した財産だからです。

 おばあちゃんは、相続税の申告と納税をしたことを天国のおじいちゃんに報告します。

 「おじいちゃん、おじいちゃんの残してくれた財産はきちんと申告して税金も納めました。おじいちゃんが孫たちに預金を贈与してくれていたおかげで、税金も少なくて済みましたよ。」

 天国のおじいちゃんもそれを聞いて喜んでいます。

 「それはよかった。安心したよ。ありがとう、おばあちゃん!」

 そしてそれから2年後、黒いカバンをもった税務署の調査官2人が、おばあちゃんのもとにやってきました。(相続税の調査は必ず二人以上で行うことになっています。)

 「おばあちゃん、おじいちゃんの相続税の申告ですが、お孫さん名義の定期預金900万円が申告されていませんね。事情を聞かせてください。」

(税務署の調査能力はすごいので、このぐらいすぐに調べてきます。)

 おばあちゃんは、落ち着いて答えます。

 「あれは、おじいちゃんが孫たちに贈与したもので、孫たちのものですよ。ただ、孫たちに通帳と印鑑を渡すと無駄遣いする心配があるので、ここに預かっていますけど。それに、孫たちは相続人じゃないので、3年以内に贈与していても相続税の申告とは関係ないはずです。」(おばあちゃん頑張れ!)

 この答えに対して、調査官は、

 「たしかに、お孫さんに贈与したものなら申告とは関係ありません。しかし、その定期預金の900万円は、お孫さん名義になっているだけで、お孫さんたちに実質的に贈与されていません。お孫さんの名前を書いた封筒に現金を入れてご自分で保管されているのと同じです」

 「つまり、その900万円はおじいちゃんのお金だったことになります。ということですので、すでに申告された財産に900万円を加えて申告と納付をやり直してください。加算税や延滞税については、後日また通知しますのでそのつもりで。」

 おばあちゃんは、まさかという顔をして、

 「ええ~!そんなぁ!・・・・」

 天国のおじいちゃんも、

 「あいちゃこら、しもた!・・・・」

 と嘆いていることでしょう。

 というのが、名義預金とか借名預金と呼ばれるものです。

 我が国の税法は、財産の名義が誰であるかを問いません。財産の名義人が子や孫・配偶者などであっても、その真の所有者が被相続人であれば申告に含めなければなりません。預貯金であれば、そのお金をだれが出したのか、また通帳や印鑑を誰が管理していたのか、などの事実によって総合的に判定されます。

 このケースでは、お孫さんが贈与の事実を認識していないことが明らかであることから、贈与があったというおばあちゃんの主張が認められることはないでしょう。

 相続税の調査で、最も指摘されることが多いのが、名義預金です。良かれと思ってしたことが思わぬ結果となることもあります。充分にご注意ください。

 ところで、上記の相続人に対する3年以内の贈与を相続財産に加算しなければならないという規定は、令和5年度自民党税制改正大綱で7年に延長される旨の発表がありました。今後国会で法律が審議され可決成立される見通しですのでご注意ください。

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