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相当の地代の貸宅地の評価

相当の地代を授受している貸宅地について、相続が発生した場合、80パーセントで宅地を評価することの是非について

当該テーマにつき、借地権に関する通達について、法人税基本通達、相続税個別通達、及び相続税財産評価基準に通底する考え方を記述してみました。
具体的な事例で、お困りの方はご連絡ください。事例を前提とした回答をさせていただきたいと思います。

(検討)
相当地代の通達は、法人地主が前提として定められている。
相当の地代を授受することは、「権利金の授受にかえて」とされているが、権利金の授受の慣行がある地域の場合はもちろん、慣行がない地域の場合も適用される。
つまり、権利金の授受の慣行のない地域においても、権利金相当額に代わるものとして相当地代を収受する取扱いが許容されている。慣行がある場合、権利金の授受がないときには、法人地主には贈与があったものとされる。一方、個人地主の場合には、相当地代の通達は、権利金の授受の慣行のある地域が前提とされる。個人地主の場合に、権利金の授受の慣行のある地域において、権利金の授受に代えて地代を相当地代にした場合には、その後の賃貸借契約において、相当地代との乖離があった場合には、改訂を行うことはいうまでもない。相当地代の土俵に上がった以上、権利金と地代の一貫した処理が前提とされる。法人地主が相当地代に満たない地代を授受しているとき、土地の無償返還に関する届出書(以下「届出書」という)を提出した場合には、権利金の認定を見合わせることとされている。なお、地主が個人の場合も届出書を提出できるものとされている。法人地主の場合には、相当地代と通常地代との差額は、贈与とされるが、個人地主の場合には、問題は生じない。相当地代の通達は、法人地主が前提とされ、権利金の授受の慣行の有無は問われていない(個人地主の場合は、先に述べた通り権利金の授受の慣行が前提である)が、相続税法ではどうか。
個人地主に、相続が発生する直前において、相当地代の授受がされて、宅地が80パーセントと評価される場合、借地権を設定したときにおいて権利金の授受の慣行がある地域であることが前提となる。ここが、法人地主と異なる点である。 
繰り返しになるが、個人地主の場合、権利金の授受の慣行のない地域では、借地権の設定において、相当地代の取扱いは適用されない。
なお、個人地主であっても、権利金の認定を見合わせるために、建物所有を目的とする賃借権を無償にて返還することを条件として、届出書を提出することができるが、地代の認定がなされないことから、この場合、相当地代でなくても(使用貸借を除く)問題は生じない。ここでも権利金の授受の慣行のある地域であることが前提とされる。
なお、届出書が提出された場合には、貸宅地は、80パーセントで評価することとなる。

(結論)
相当地代を授受しているからといって、必ず、相続が発生した場合の宅地を80パーセントで評価するわけではない。80パーセントの評価がされるのは、権利金の授受の慣行のある地域において、権利金に代えて地代を授受する場合に限られる。なぜなら、権利金の授受と地代の授受は、セットで課税が完結するからである。個人地主の場合には、権利金の授受の慣行のないところに、権利金に対する課税原因は発生しないからである。なお、借地権の取引慣行がある地域が、必ずしも、権利金の授受の慣行がある地域であるとはいえない。借地権の設定と借地権の継続とは、場面が異なるためである。留意する必要がある。

(追伸)
借地権の課税を分かりにくくしている要因は、次の点にあるものと思われます。
① 「権利金の授受の取引慣行」と、「借地権取引の慣行」は、明確に区別されるべきであるにもかかわらず、混同していること。
② 「慣行」の有無の認定が困難であること。  
③ 借地権の「入口」、「途中」、「出口」の場面を混同していること。
④ 相当地代の通達は法人地主が前提であるが、個人地主の場合の定めがないため、取扱いが不明瞭であること。

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