(医療法人の出資持分のすべての放棄に係る経済的利益について)
「放棄」という言葉の意味は、自分の権利、資格などを捨てて行使しないことです。
出資持分を放棄した者(全員)は、放棄したことによる経済的利益を捨てていますが、その経済的利益は誰に帰属するのでしょうか。
結果として、相手方の医療法人に帰属することとなります。なお、出資持分の放棄の場合、持分の移転ではなく株式の消却(取得することなく消滅させること・法人税法24条1項6号)と同様、譲渡性は認められないため、みなし譲渡(所得税法59条)の適用はないとされています。(平成17年4月27日課税部長回答)
この経済的利益は、原則として、法人を個人とみなして贈与税の対象となります。(相続税法66条)
しかしながら、医療法人が厚生労働省の認定を受け、認定後に出資持分の放棄を行ったときは、贈与税の課税は猶予されます。
贈与税が猶予される場合(厚生労働省の認定を受けた医療法人に対する贈与)には、移行による法人側の処理は、資本取引であり、原則としてすべての純資産は、設立等準備金として、処理されます。(租税特別祖措置法70条の7の14)
ただし、認定から6年間経過するなかで、贈与税が課税される場合には、贈与税額を設立等準備金より減額し、未払計上することになります。
なお、放棄した出資者には、放棄したことにより払い戻しは行われないことから、配当とみなされる利益もないことになります。所得税は課税されることはありません。
また、相手方の医療法人は、出資者の出資払戻請求権や解散時の残余財産分配請求権に応じなくてもこれにより生じる経済的利益に課税されることはありません。
この点は、平成20年度の税制改正により、法人税の整備がされ、課税の問題はないこととされています。
持分のない医療法人への移行がなかなか進まなかったのは、役員の親族が3分の1以下という非課税基準が高いハードルとなっていたものと思われます。
これからは、「非課税基準」にかわる「運営上の適正性要件」により、持分のない医療法人への移行も少しずつ増えていくものと思われます。認定期限は、令和5年9月30日です。出資持分のない医療法人への移行をお考えの方はご連絡ください。