資産税(相続税・贈与税・譲渡所得等)関連の税法には、複数の選択が可能な規定が存在します。相続税を例に話を進めます。
被相続人は事業を行っています。被相続人は、事業以外に不動産の貸付も行っています。また、自宅も別の場所に保有しています。相続税を計算するにあたって、小規模宅地等についての課税の特例の制度があります。被相続人が事業(貸付を含む)または居住していた宅地等のうち必要最小限の部分は、相続人の生活基盤維持のため欠くことのできないものであり、その処分に相当の制約を受けるため評価上の斟酌をするものとされています。
当初申告において、選択されるべき宅地が「事業用・貸付用・居住用」の三ヶ所あり、事業用と居住用の選択が最も有利であるにもかかわらず、誤って貸付用と居住用の選択を行った場合には、原則として更正の請求の対象とはならないとされています。これは最も有利な選択ではないものの、次善の策とはいえ適法に選択されたものであるためと説明されています。優先順位の選択の誤りは、更正の請求ができないのです。
ところで、誤った選択による申告を行ったものの、他の申告漏れの財産が判明し、修正申告の必要が生じたとします。この場合には、改めて当初の誤った選択ではなく、最も有利な選択に差し替えることができるのでしょうか?
参考となる判例があります (最高裁三判1990年6月5日) 。
所得税の確定申告において、措置法第26条第1項に基づくいわゆる概算経費により、事業所得の金額を計算していた場合。この際修正申告をするにあたって、確定申告における計算誤りを是正するため、いわゆる実額経費に変更することが許されました。措置法の選択から一般法への選択替えです。この事例から考えられるのは、修正申告の提出にあたっては、前回の当初申告における措置法の選択は白紙撤回されるということです。
判例は所得税のケースですが、相続税においても同様の選択替えはできないのでしょうか?
修正申告の場合、次善の選択に替えて最適解の選択が可能であると思われます。
次に、更正の請求の場合も同様に考えていきます。
複数の選択において、最適解の選択ではなく次善の選択を行った場合、適法な選択には相違ないものの、最適解への選択洗い替えはできないのでしょうか?
修正申告の場合には、当初申告の選択は洗い替えされるのに対して、更正の請求の場合は洗い替えされないのは、公平の原則に反する(納付の場合は認められ、還付の場合は認められない)ことになるのではないでしょうか?
皆さんはどう思われますか?